第2回 著者 村田 浩道


 3月から始まった富士登山企画は7月までの訓練を経て、富士山に挑戦するものだ。その訓練の第1回目は、地元滋賀県の三上山(432m)が選ばれた。紫式部が和歌にも詠んだ近江富士の愛称を持つ山だ。富士とつくだけに、第1回目にここを選んだと思う。
 麓の御上神社で安全祈願と富士山登頂祈願をすませ、いよいよ企画がスタートするのだが、山頂までの往復が3時間程度、休憩時間を考えても3時間半の登山コースだ。なんだか私のガイディング能力が試されているかのようでもある。
 一方、お客様は昨日装備を買いに行ったような方たちばかりで、デニムのパンツや綿パーカー、リュックは腰の位置まで下がり、足元はデッキシューズといういで立ちもチラホラ...。山岳会であれば「山なめとんのか‼」と、お決まりのフレーズが聞こえてきそうである。
 登山口の駐車場の片隅で、ウェア、登山靴、リュックなどの登山装備の説明とその使い方。そして、行動食と飲料の選び方やその必要量などの説明に多くの時間がかかった。装備不足については想定の範囲だったので、旅行社と相談してあらかじめ机上講習会で説明しておいたのだが、現場ではこちらの思うようにはならなかったようだ。

 その後、赤坂山、高見山、伊吹山、木曽駒ヶ岳と訓練が続いたと記憶している。木曽駒ケ岳での最後の訓練が終わるころには、超初心者だったお客様も、気分はアルピニストになっていくものだと感じた。どうにか富士登山の心構えと、少しの登山スキルは上がったようだ。
 ただ、私自身が夏の富士経験がないのは少々気がかりではあった、すると仲間のガイドが富士登山ツアーに参加して、夏富士の様子や富士山ガイドなるものを見てくると言いだした。なんと優秀な仲間だろう。かくして仲間の富士登山ツアー潜入作戦は決行され、ガイドの身分を隠しての隠密行動により、夏富士の特異な実態が我々に伝えられた。


■バックナンバー
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■著者紹介

村田 浩道(むらた ひろみち)
日本山岳ガイド協会認定ガイド、トレイルコーディネーター
NPO法人日本ロングトレイル協会理事・事務局長、NPO法人高島トレイルクラブ理事ほか。
高島トレイルをはじめ、全国のトレイル活性化事業にたずさわり、ロングトレイルとビジネスをテーマに活動している。また、禅宗僧侶として、禅と登山についての考察も日々おこなっている。