表彰式・講演会 概要報告    
(敬称略)
 1月25日(土)、2019年度自然体験活動支援事業「第18回トム・ソーヤースクール企画コンテスト」表彰式が、横浜市の安藤百福発明記念館 横浜(愛称:カップヌードルミュージアム 横浜)で開催され、教育関係者をはじめ、自然体験活動関係者や一般の方々など、およそ220名が参加されました。

記念撮影

<主催者挨拶 要旨>
公益財団法人 安藤スポーツ・食文化振興財団 安藤 宏基 理事長

安藤理事長  本日の表彰式には文部科学大臣賞、安藤百福賞をはじめ受賞されました団体の方々にお越しいただきました。
近年、自然体験活動が重要になってきたと感じています。自然体験は道徳観や正義感をふくめて、人間形成に重要ですが、特に今、環境問題が深刻になっています。行政や企業はもちろん、国民全体が環境問題への認識を深めなければならないと思います。企業としましても、容器素材の見直し、再生エネルギーの活用などに取り組んでおりますが、「利便性」というものが自然環境を壊しているという事を認識して、生活のライフスタイルを見直すステージに来ていると思います。そういう時代に即して、生活の中で不要なものを省き地球への負荷を低減するためには、自然体験を通して自活力を養うことが重要だと思います。そのような中で、今日表彰いたします14団体、特に文部科学大臣賞、安藤百福賞を受賞された方々の活動は、すばらしいものがあります。
 本日は、表彰4団体の活動報告と貫田宗男さんの講演を楽しみにしています。このコンテストには、文部科学省、横浜市、および横浜市教育委員会からもご支援をいただき、このような会を催すことができまして大変喜んでおります。本日表彰されました皆様、誠におめでとうございます。

<来賓挨拶 要旨>
文部科学省 総合教育政策局 地域学習推進課 青少年教育室 室長 平川 康弘 様
来賓挨拶  「第18回トム・ソーヤースクール企画コンテスト」表彰式が盛大に開催されますことを心よりお喜び申し上げます。各地域で自然体験活動のさまざまな取り組みをされたことが高く評価され、本日、各賞を受賞された皆様、誠におめでとうございます。
 文部科学省におきましては、児童生徒へのパソコンの配布等、最先端技術(ICT)の活用を打ち出しましたが、片や、今までの教育実践も重要であり、これからは、今までの教育実践とICTの活用をうまくベストミックスして展開することが必要かと思います。
 そういった中で、文部科学省も自然体験活動が重要と考えており、来年度の新学習指導要領にも、子どもたちが自立して社会に参加するために自然体験活動を重要な施策として位置づけています。
 今回、文部科学大臣賞を受賞されました越前市立味真野小学校をはじめ、さまざまな取り組みにつきましては、郷土愛を育む、一緒に山に登って達成感や喜びを味わうなど、ICTではできない活動であり、これからもこのような活動を進めるべきであると考えています。
安藤百福賞を受賞されました NPO法人海の森・山の森事務局をはじめとした、学校外での活動をされている皆様、子どもたちへの自然体験活動の提供は、これからも学校内外で必要であると考えています。本日受賞された皆様は今回の受賞をひとつの契機として、これからも様々な体験活動を子どもたちに提供していただき青少年の健全育成にご尽力いただきたいとお願い申し上げます。
結びに、主催者の安藤財団をはじめ関係者の皆様、今後とも子どもたちの健全育成にご尽力いただくことを願っております。

横浜市こども青少年局長 齋藤 聖 様
来賓挨拶  地元を代表し、林文子市長に代わって「第18回トム・ソーヤースクール企画コンテストで受賞された皆様、誠におめでとうございます。」とご挨拶がありました。
「自然とふれあい、自然を知るといった、本物の体験をすることは、青少年の健全育成に大きな役割を果たし、青少年が社会的に自立していくために必要な能力を養います。」という趣旨のお祝いの言葉がありました。




<審査講評>
 審査委員を代表して、節田 重節 特定非営利活動法人 日本ロングトレイル協会会長の審査講評がありました。

審査講評  学校部門の最優秀賞となる「文部科学大臣賞」は、越前市立味真野小学校(福井県)の「やっぱ Ajimano おもし Reiwa!『鞍谷の 7ふしぎ』50年ぶりに復活させるぞ!!」に決定しました。
 ユニークなテーマの取り上げ方とストーリー性のある企画でした。イベント的な要素と農業体験などを組み合わせながら子どもたちのモチベーションを高めるなど、しっかりとしたプログラミングされた企画力が評価されました。

 一般部門の最優秀賞である「安藤百福賞」は、NPO法人 海の森・山の森事務局(神奈川県)の「子どもたちと取り組む未来へのゼロ・マイクロプラスチック大作戦!」に決定しました。
 海遊びを体験しながら、海洋プラスチック汚染の問題を実地に学ぶ「環境学習」の出前授業といえます。実施回数や参加者も多く、高い広報発信力を感じる活動が評価されました。

学校部門の「優秀賞」は、南アルプス市立芦安中学校(委託:NPO法人芦安ファンクラブ)(山梨県)の「五感で感じる体験―南アルプス『鳳凰三山』への全校登山及び自然環境・森林保護 活動等の支援」に決定しました。
 恵まれた環境を生かして、事前の学習やトレーニングをしっかりされている点、特に子どもたちに「自分たちで登る」という意識付けを丁寧に行っている点が評価されました。

 一般部門の「優秀賞」は、独立行政法人 国立青少年教育振興機構 国立大雪青少年交流の家(北海道)の「令和元年度『災害サバイバルキャンプ』」に決定しました。
 よく練られた避難生活体験企画でした。日程を明かさなかったことも、緊張感とともに工夫が生まれ、効果的だったと思われます。

他団体の参考になるような活動に贈られる「推奨モデル特別賞」は、つぎの2団体に決定しました。
[学校部門]
尾鷲市立宮之上小学校(三重県)
 「僕らのあそび場づくり ~山育・木育・おわせ行く~」
 山で育てられ木に育てられながら、子どもたち自らの手で遊び場を作っていく様子は、紀伊山地ならではの企画でした。
[一般部門]
NPO法人 霧多布湿原ナショナルトラスト(北海道)
 「きりたっぷ子ども自然クラブ」
 14年間継続して実施してきたことで地域の人々に評価され、地元に根付く活動となりました。

今後さらなる飛躍が期待される活動に贈られる「トム・ソーヤー奨励賞」は、つぎの2団体に決定しました。
[学校部門]
横浜市立大岡小学校(神奈川県)
 「こちら横浜やきもの研究所!~伝統と環境を未来につなごう~」
6年生の子どもたちが、すべて自分たちの手で企画したという点が評価されました。
[一般部門]
NPO法人 暮らし・つながる森里川海(神奈川県)
 「子どもが元気、いきもの元気、地域が元気『湘南いきもの楽校水ガキ養成講座』」
多彩なプログラムが持続的に実施され、指導者や保護者の熱心さも伝わってくる企画でした。

「努力賞」は、つぎの6団体に贈呈します。
[学校部門]
横浜市立下野庭小学校(神奈川県)
 「命あふれる自然館大作戦!~よこはまメダカを守りタイ!~」
浜松市立三方原小学校3年生(静岡県)
 「『大地に輝く子』育成プロジェクト ~先人から引き継ぐ『やらまいか』精神を育てる!~」
京都市立大淀中学校 家庭科部(京都府)
 「徹底追跡!!この種はどこにいくのだろう? ~一粒の種と共に体験し、考える世界~」
[一般部門]
小笠原扇浦青年団「要会」キッズカヌークラブ(東京都)
 「小笠原キッズカヌークラブ」
狛江水辺の楽校(東京都)
 「多摩川ガサガサたんけん隊」
福井県山岳連盟(福井県)
 「ふくい冒険満喫!レッツ!チャレンジ・クライミング」

<表  彰>
■学校部門
文部科学大臣賞 (副賞100万円+チキンラーメン1年分)
越前市立味真野小学校 (福井県)
企画名 「やっぱ Ajimano おもし Reiwa!『鞍谷の 7ふしぎ』50年ぶりに復活させるぞ!!」
 学校部門 文部科学大臣賞 
文部科学省 総合教育政策局地域学習推進課青少年教育室 平川康弘室長から、棟田雅巳先生へ表彰状の授与

■一般部門
安藤百福賞 (副賞100万円+チキンラーメン1年分)
NPO法人 海の森・山の森事務局 (神奈川県)
企画名 「子どもたちと取り組む未来へのゼロ・マイクロプラスチック大作戦!」

 一般部門 安藤百福賞 
安藤宏基理事長から、豊田直之様へ表彰状の授与

■学校部門
優秀賞 (副賞50万円+チキンラーメン半年分)
南アルプス市立芦安中学校(委託:NPO法人芦安ファンクラブ) (山梨県)
企画名 「五感で感じる体験―南アルプス『鳳凰三山』への全校登山及び自然環境・森林保護 活動等の支援」

 学校部門 優秀賞 
安藤宏基理事長から、石原敬彦校長へ表彰状の授与

■一般部門
優秀賞 (副賞50万円+チキンラーメン半年分)
独立行政法人 国立青少年教育振興機構 国立大雪青少年交流の家 (北海道)
企画名 「令和元年度『災害サバイバルキャンプ』」

 一般部門 優秀賞 
安藤宏基理事長から、門前詩織様へ表彰状の授与

<受賞団体報告>
表彰式ののち、受賞各団体から活動報告がありました。

学校部門 文部科学大臣賞 学校部門 文部科学大臣賞
越前市立味真野小学校 (福井県)
「やっぱ Ajimano おもし Reiwa!『鞍谷の 7ふしぎ』50年ぶりに復活させるぞ!!」

●発表のポイント
・子どもたちが郷土の不思議な自然に興味を持ち、自分たちで調査、保全活動や観察を行った:
・幻の清水を探し当てて整備、木碑を建てて10年後に集まるためタイムカプセルを埋めた。
・古い記録では出ないと書かれていた木の化石らしき石を発見。
・時水(間欠冷泉)に生息するハコネサンショウウオを観察。
・農業体験との関連づけ:山の水を持ち帰り自分たちで栽培したお米を炊いて食べた。
・秋に霞がかからないという地区があるが「春はどうなの?」という質問が返ってきた。
 今後も子どもたちの素直な心を大切にしていきたい。


一般部門 安藤百福賞 一般部門 安藤百福賞
NPO法人 海の森・山の森事務局 (神奈川県)
「子どもたちと取り組む未来へのゼロ・マイクロプラスチック大作戦!」

●発表のポイント
・ゴミの現状を学び実際に見ることによって、子どもたちが真剣に問題に取り組むようになった。
・シンポジウムやエコプロダクツ展に参加し活動報告。子どもたちは活動に自覚と自信を持つようになった。
・子どもたちの無限の発想力:
・ゴミのペットボトルからエコバッグを作り、近くのスーパーに寄付。
・自分たちで治水事務所に連絡し、フェンスを開けてもらってゴミ拾い。
・ポスターを作ってゴミ拾いの協力を募集
・ストローを使わずに飲めるパッケージをデザイン。


学校部門 優秀賞 学校部門 優秀賞
南アルプス市立芦安中学校(委託:NPO法人芦安ファンクラブ) (山梨県)
「五感で感じる体験―南アルプス『鳳凰三山』への全校登山及び自然環境・森林保護 活動等の支援」

●発表のポイント
・南アルプス開山祭に参加し、地元の文化に対する理解を深めることができた。
・学校林の整備、間伐材からの輪かんじき作り等、持続可能な社会の実現に向けた学習を行った。
・登山体験の写真レポートを作成し、感動を自分のものとして表現する力を育成した。
 またレポートを学園祭や地域の文化祭に展示し、地域の活性化にもつながった。
・全校登山を通して、生きていることを実感し、希望・不安・達成感などを共有しながら、
 仲間や自分を見つめ、今後の生活や生き方を考える機会となった。
・子どもたちの声や意見から、支援をいただいた皆様への感謝、トレーニングの有用性、
 全員で成し遂げた達成感、自然や植物への関心の高まりなどが感じられた。


一般部門 優秀賞 一般部門 優秀賞
独立行政法人 国立青少年教育振興機構 国立大雪青少年交流の家 (北海道)
「令和元年度『災害サバイバルキャンプ』」

●発表のポイント
・子どもたちが最後まで必要感を持って活動に取り組めるようにストーリー性を持たせ、トライアンドエラーから新たな工夫を生み出すことを考えて企画を立てた:
 - 十勝岳噴火の足跡を辿るフィールドワーク、十勝岳登山による現状の確認
 - 避難所での生活体験(段ボールベッド・仮設トイレ・ソーラー発電・野外入浴)
 - ライフラインの確保(水の確保と浄水・災害食作り)
・「災害時に慌てなるかもしれない」「知ることで生まれる安心感があった」「災害への関心が高まった」
 などの感想が聞かれた。


<講演会>
登山家の貫田宗男さんをお招きし、「海外の山を登り続けて」をテーマにご講演をいただきました。
 病弱でスポーツが苦手だった幼少期から、登山家になり山岳コンサルティングを行う現在までの経験談と、美しく神々しい山々の姿をご紹介いただきました。
「現代人が失いつつあるのは冒険心と挑戦する気持ちだ。挑戦は人を豊かに美しくする。意欲と知恵と遊び心が大切。」という結論で締めくくられました。
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