表彰式・講演会 概要報告    
(敬称略)
 1月28日(土)、2011年度自然体験活動支援事業「第10回トム・ソーヤースクール企画コンテスト」表彰式・講演会が、横浜市の安藤百福発明記念館(愛称:カップヌードルミュージアム)で開催され、教育関係者をはじめ、自然体験活動関係者や一般の方々などおよそ200名が参加しました。

記念撮影

<主催者挨拶 要旨>
(財)安藤スポーツ・食文化振興財団理事長 安藤 宏基

安藤理事長  日清食品の創業者で、安藤スポーツ・食文化振興財団の創設者でもある安藤百福は、発明心は小さな頃から育むことが重要であると思っていました。そこで、大阪にインスタントラーメン発明記念館を、さらに昨年9月にここ横浜にも発明記念館を設立しました。安藤財団は設立29年となり、現在、大きく4つの事業を行っています。そのひとつが自然体験活動で、その中でもトム・ソーヤースクール企画コンテストは、大変重要な事業となっています。
 今日はトム・ソーヤースクール企画コンテストの10回目となる表彰式で、文部科学大臣奨励賞、安藤百福賞、優秀賞など全部で8つの表彰をさせていただきます。本日は、その中で5団体の方々においでいただきました。本年度は144団体からご応募がありました。受賞されたみなさまには、心よりお祝い申しあげます。
これらの団体の方々は、きめ細やかに毎日のように指導され、一生懸命に取り組んでおられていますが、この事は大変重要であると思います。
 しかしながら、一方で指導者不足も大きな課題であると思っています。そこで、一昨年の5月に長野県小諸市に安藤百福記念自然体験活動指導者養成センターを設立して、上級指導者の育成を行っています。
 また、日本は活力を取り戻さなければいけないと思います。私はハングリースピリッツと言っていますが、自然体験活動では自活力が育まれます。どんな環境にあっても、何があっても自ら生き延びていく自活力が大変重要であると思います。アジアの新興国が成長しているなかで、日本も高度成長から成熟して、もう一段成長していかねばなりません。しかし、環境が整いすぎている社会では、ハングリースピリッツは生まれにくいわけですが、子どもたちが大きな自然の中でさまざまなことを学ぶことが、自活力につながっていくと思います。日本の再成長を考える上で。子どもたちが小学生の頃から、多くのことを自然体験の中で学んでいくことが、一生を通じて大変重要なことになると痛感しています。その指導にあたられた、団体の方々、先生方に心より感謝申しあげます。

<来賓挨拶 要旨>
文部科学省大臣官房 審議官 有松 育子 様
有松大臣官房審議官  第10回目となったトム・ソーヤースクール企画コンテストの表彰団体のみなさん、おめでとうございます。それぞれの地域で自然体験活動を企画され、そのユニークさが高く評価さて、受賞されたとことと思います。
 現代の子どもたちは豊かさと便利になった社会を享受しながらも、自然体験の機会を失っています。いまの子どもたちは、頭の中で学ばねばならないことがいっぱいあります。一方で、生きる力、生き抜いていく力を身につけるためには、体験が欠かせないわけです。
特に自然と触れ合う中で、友達と協力しあったり、自分にチャレンジしたりという体験を通して、子どもたちは心とからだを育んでいきます。
 自然体験をすすめていくうえで、優れた企画を立てて、どういう形で子どもたちに体験の機会を用意するかということが、大変重要だといわれています。その点で、トム・ソーヤースクール企画コンテストの自然体験活動の意義は、大変大きなものがあると思います。今回、表彰された企画の内容が、各地でさらに広がっていくことを期待します。

横浜市副市長 山田 正人 様
山田副市長  地元を代表して横浜市山田正人副市長が林文子市長に代わって、「ようこそ横浜市へ」とご挨拶がありました。
 「トム・ソーヤースクール企画コンテストで受賞されたみなさま、おめでとうございます。横浜市も子どもたちの自然体験活動を積極的に行っています」とお祝いの言葉がありました。






<講 評>
 審査委員を代表して、岡島成行 大妻女子大学教授の講評がありました。

岡島審査委員  学校部門の最優秀賞である「文部科学大臣奨励賞」を受賞した、京都市立修学院中学校ワンダーフォーゲル部「夏合宿黒部のイワナを求めて」は、チャレンジの内容が非常に高い内容でありました。しっかりとした計画で、非常に教育的効果が高いように思われました。予定していた夏合宿が豪雨により計画変更を余儀なくされましたが、指導にあたった先生の登山に対する理念と、熱意や日々のトレーニング(企画)の成果がみられました。さらに、部員たちにはその困難を乗り越える姿がうかがえ、審査員にも山岳部出身者がたくさんおられますが、一様に高い評価でした。

 また、一般部門の最優秀賞である「安藤百福賞」に選ばれた、福井県の新庄わいわい楽舎「米STARS in 新庄」は、大学院生という若い方がリーダーとなって、過疎地で地域の人たちの協力を得ながら、子どもたちと米作りを行う企画でした。米作り体験を通じて、楽しみながら地域や自然環境を考える活動を展開し、単なる農業体験に終わらせないプログラム作りが高く評価されました。地域の新たなつながりのきっかけになるなど、人と人の絆をつくる活動となるなど、ESDの概念にしっかりそったものであることも、評価の対象になりました。

 学校部門の「優秀賞」を受賞した、福井県の敦賀市立西浦中校「第19回いかだレース」は、少人数の学校ですが郷土の自然を活かし、いかだを作って海を渡るという活動に、子どもたちの独創性に富んだプログラムと、まとまりがみられました。また、保護者や地域の人々の協力も得て実施し、地元の新聞社とも協力した「いかだ新聞」製作など、教育的効果を持たせるための先生の工夫と努力が、高く評価されました。

 一般部門の「優秀賞」を受賞した神奈川県のNPO法人 鶴見川流域ネットワーキング「バクの流域こども探検隊(愛称:ライジャケ隊)の都市の自然を発見体験」は、都市部を流れる河川の環境問題が全国で注目される中、親子が一緒になって地元の川で活動することにより、環境保全などの意識を高めようとする、きわめて完成度の高いプログラムでした。全国的にも知られた団体だけあって、継続的に行っている活動内容や、地域のネットワークの構築などは、他団体の参考になると思われます。

 また、今年度は新たに「推奨モデル特別賞」を設けました。この賞は、自然体験活動のプランニングや指導の方法、そして計画を実施に移す過程などが、多くの学校や団体の参考モデルになると認められた企画に贈るものです。今年度は、長野県の伊那市立伊那小学校6年文組「文組ドリームプロジェクト」に決定いたしました。仲間と協同して小麦栽培からパン作りまで、一貫した食の探求を行った活動が高く評価されました。同校は2008年度に文部科学大臣奨励賞を受賞していますが、このような体験活動が継続してできる子どもたちは、幸せだと思います。

 企画内容がユニークであり、さらなる発展が期待できるプログラムに「トム・ソーヤー奨励賞」をお贈りしています。今年度は、岐阜県の七宗町立上麻生小学校「我ら日本最古の石の町!石の不思議探検隊!!」、大阪府の特定非営利活動法人 すいた環境学習協会「小学校の校庭の一角に −野生の生きものとふれあえる、自然豊かな里山づくり−」、そして、広島県の広島登山研究所「ジュニアアルパインクラブ(わんぱく登山部中学部)」の3団体を、トム・ソーヤー奨励賞に選考させていただきました。

<表 彰>
■学校部門
文部科学大臣奨励賞 (副賞100万円+チキンラーメン1年分)
「京都市立修学院中学校ワンダーフォーゲル部」(京都府)
企画名 「2011年度 夏合宿 黒部のイワナを求めて」
 学校部門 文部科学大臣奨励賞  学校部門 文部科学大臣奨励賞
文部科学省有松育子審議官から 森田隆章先生への表彰状授与

■一般部門
安藤百福賞 (副賞100万円+チキンラーメン1年分)
農事組合法人 新庄わいわい楽舎 米STARS in 新庄実行委員(福井県)
企画名 「米STARS(マイスターズ)in 新庄」

 一般部門 安藤百福賞  一般部門 安藤百福賞

安藤財団安藤宏基理事長から 足立修一さんへ表彰状の授与

■学校部門
優秀賞 (副賞50万円+チキンラーメン半年分)
福井県敦賀市立西浦中学校(福井県)
企画名 「第19回いかだレース」

 学校部門 優秀賞  学校部門 優秀賞
安藤財団安藤宏基理事長から 野寛男先生へ表彰状の授与

■一般部門
優秀賞 (副賞50万円+チキンラーメン半年分)
鶴見川流域ネットワーキング(略称:npoTRネット)(神奈川県)
企画名 「バクの流域こども探険隊(愛称:ライジャケ隊)の都市の自然を発見体験」

 一般部門 優秀賞  一般部門 優秀賞
安藤財団安藤宏基理事長から 亀田佳子理事へ表彰状の授与

■部門共通
推奨モデル特別賞 (副賞20万円+チキンラーメン1年分)
伊那市立伊那小学校6年文組(長野県)
企画名 「文組ドリームプロジェクト」

 推奨モデル特別賞  推奨モデル特別賞
安藤財団安藤宏基理事長から 登内淳先生へ表彰状の授与

■部門共通
トム・ソーヤー奨励賞 (副賞チキンラーメン半年分)
七宗町立上麻生小学校(岐阜県)
企画名 「我ら日本最古の石の町!石の不思議探検隊!!」

特定非営利活動法人 すいた環境学習協会(大阪府)
企画名 「小学校の校庭の一角に −野生の生きものとふれあえる、自然豊かな里山づくり−」

広島登山研究所(広島県)
企画名 「ジュニアアルパインクラブ(わんぱく登山部中学部)」

<受賞団体報告>
表彰式ののち、受賞各団体から活動報告がありました。

京都市立修学院中学校ワンダーフォーゲル部 学校部門 文部科学大臣奨励賞
京都市立修学院中学校ワンダーフォーゲル部
「2011年度 夏合宿 黒部のイワナを求めて」

●発表のポイント
1.沢登りをする。(水が作りだす造形の美しさ、この先どんな困難が待ち構えているのか分からないドキドキ感、自ら考えルートを決め越えていく達成感を経験させる。)
2.一人一人に目的と責任を持って行動させる。(5〜6人の班に分け、食糧・装備も班ごとにして計画、行動させる。)
3.費用を安くする。(18キップを使い、北アルプス3泊4日を1人13,000円で行った。)

農事組合法人 新庄わいわい楽舎 米STARS in 新庄実行委員 一般部門 安藤百福賞
農事組合法人 新庄わいわい楽舎 米STARS in 新庄実行委員
「米STARS(マイスターズ)in 新庄」

●発表のポイント
「18人の米STARの誕生」
田んぼの水源調査や生き物観察など、身近な自然や暮らしに学びの焦点を当て、お米ができるまでのプロセスを一貫して体験してもらうことができた。また、米作りに対する知識だけでなく、食べ物を作るために協力して作業することの大切さも 学んでもらい、「米STAR」に値する体験ができた。最終回では18人の子どもたちに(米STAR認定証を授与した。)
山の子ふれあい振興社の活躍(詳しくはブログを参照)新庄小学校では5、6年生が総合学習の時間で「山の子ふれあい振興社」という組織のもとで様々な村おこしの活動を行っており、米STARSではそんな「社員」たちにスタッフとして協力してもらった。それにより、新庄の子どもたちが苗の植え方や区内の道案内をしているシーンが見られ、子どもと大人の双方向の学び合いが行われていた。

「米づくり×村づくり」
新庄の若者や県外の学生にも企画に関わってもらうことで、プログラムが単なる「米作りを学ぶ」だけに留まらず、「参画と交流の場」としての機能を果たし、地域内外の子どもや若者同士の新たなつながりを生み出し、新庄区の村づくりにも貢献できた。

福井県敦賀市立西浦中学校 学校部門 優秀賞
福井県敦賀市立西浦中学校
「第19回いかだレース」

●発表のポイント
中学生が手作りのいかだに乗り、学校前の浜から水島までの約800mを競う。
今年で19回目を迎えるが、第1回のレースは平成5年9月14日に行われた。「生徒が主体的に取り組み、ゆとりのある充実した学校生活が送れるよう共同体験学習を組み込むことで、地域の実態に即した学校づくりを推進する」ことを目的として、3隻が参加。生徒数は減少傾向であるが、地域の方々の協力もあり、西浦中学校の夏の伝統行事として定着し、毎年実施されている。
夏休みを製作期間とし、生徒自らの手でいかだを完成させられるように、教師の指導は最小限にとどめる。
小学生は応援旗を作り、当日は漁船(保安船)に乗り、地域の方々と一緒に中学生の応援をする。
レース当日、ゴールの水島で清掃活動をする。
いかだレースのまとめとして新聞作りに取り組む。
(新聞社の方による新聞作り講習会、新聞の相互評価・報告会等)

鶴見川流域ネットワーキング 一般部門 優秀賞
鶴見川流域ネットワーキング(略称:npoTRネット)
「バクの流域こども探険隊(愛称:ライジャケ隊)の都市の自然を発見体験」

●発表のポイント
不特定多数の子どもたちに募集をかけるのではなく、熱心な子どもたちをターゲットとした登録制とし、流域で活動する市民団体・治水施設・河川整備された拠点を巡りました。現地の方々のサポートのもと、子どもたちは楽しい体験を通して、治水や防災、水循環について学ぶことができました。
鶴見川流域の自然と生きものなどの関心事を共有することで、共に遊び、助け合う子どもの縦のつながりができたと同時に、同行する保護者は子どもたちが活きいきと活動する変貌の姿をみて感動し、意欲をもって活動をサポートしてくれました。「らいじゃけMammy's」という通信を保護者の有志たちが自発的に発行もし、子どもと大人の新しいネットワークも構築されました。

伊那市立伊那小学校6年文組 推奨モデル特別賞
伊那市立伊那小学校6年文組
「文組ドリームプロジェクト」

●発表のポイント
「自分たちの力で1からパンをつくる」(自分たちの夢の実現に挑戦)
それぞれの活動が、子どもたちの夢を実現するために必要な活動になっていたこと。
「自分たちの力でできた」と子どもたちが実感できるように支援を工夫したこと。
一連の活動が、友達と力を合わせたり、驚いたり、喜んだり、子どもなりに工夫できたり、初めて知ったり、何回かやっていく内にできるようになったりするなど、子どもの知性をくすぐり感性を揺さぶる活動になっていたこと。

<講演会>
登山家 栗城 史多さん 登山家の栗城史多さんをお招きし「夢を否定しない社会へ 子どもたちの夢の育て方」をテーマに、ご講演をいただきました。
栗城さんは、単独無酸素で世界の高峰を、リアルタイムに映像を発信しながら登山を行っています。講演会では「登山を通して子どもたちにチャレンジ精神を伝えたい」との思いから、自らの体験談をお話いただきました。「夢を実現するには、自分の夢や目標をひたすら言葉に出し続ける。言い続けることによって、たくさんの人たちと夢が共有でき、そして実現します。また、大人が子どもたちに夢を語れる人が少なくなっています。夢は言葉に出すことです。」と「夢を否定しない」大切さを伝えていただき、講演会は終了いたしました。
登山家 栗城 史多さん 登山家 栗城 史多さん