平成18年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
30 NPO法人 グリーンウッド自然体験教育センター 長野県 「僕たちにもできた!!2006登り窯プロジェクト」地域に根ざした暮らしから学ぶ自然体験―土・木・炎からものづくり
「登り窯」で手作りの食器を作る。登り窯の仕組みを通じて自然について科学的な理解を深めるとともに、燃料の赤松を用意するなどの自然体験活動のプログラムが組み込まれる。

「僕たちにもできた!!2006登り窯プロジェクト」 子どもが主役!~窯焚き編 [11/24-26]

 日  時:平成18年11月24日~26日
 場  所:長野県泰阜村 NPOグリーンウッド施設内 伊那谷あんじゃね自然学校
 参加者:小学5年生~中学3年生15名、スタッフ5名、地元陶芸家2名

7月から始めた活動もクライマックスを迎えます。
今回はいよいよ自分たちが作った作品を自分たちで改造した「穴窯」で焼きます。目指すは1250℃です。
この窯焚きでは「子どもたちで焚く!」ということを大きな目的として掲げました。
陶芸の先生を含め関わる大人は基本的に見守るだけ。
絶対にやってはいけない危険なことをした時、あるいは子どもたちの集中が切れそうな時に声を掛けるだけとしました。
この窯焚きのために、事前学習を行い、ガス窯を焚き、穴窯の改造をどうするかを子どもと話し合い、
レクチャーを続けてきたのです。これは大人にとっても大きなチャレンジです。

11/24 午前8:00 火入れ式
子どもたちが松明を持ち、窯焚きへの想いや決意を言葉にして火をつけました。
3日間に渡る窯焚きがスタートしました。
窯焚きは、1.4時間ごとのローテーションを組む 2.リーダーを決めない という2点を大切にしました。
これは窯焚きをしている間は常に全員で焚いている意識を持たせ
逆にローテーションに入っている間は自分がみんなの代表なのだということを意識させるためです。

ローテーションには2~3人のグループで入ります。
窯の中を見て薪を入れるかどうかの指示を出す人、薪を窯の中へ入れる人、その人に薪を渡す人と
それぞれ役割を決めます。また役割が偏らないように時間内で交代して作業します。
どれくらいの太さの薪を何本入れるか、そしてどこにいれるのか、インターバルを何分にするのか
全て子どもたちが判断します。
まずはサングラスをかけて窯の中を見ます。熾きのたまりぐあいや、窯の暗いところを観察します。
偏った入れ方をすると窯全体が同じように焚けずバラつきがでてしまうのです。
しかし奥までは見えませんので、窯の状態を総合的に判断しなければなりません。
難しい判断を迫られることも多々ありましたが、仲間と相談したり、過去のデータをみながら判断していきました。
次のローテーションの子どもたちが来た時にまずすることは引き継ぎです。
自分たちがどうやって焚いていたのかを伝えます。
ここで重要になってくるのは「言葉」にすること。それぞれ多くの気づきや発見があります。
それを言葉にすることで、自分の考えていることが整理され、明確になるのです。
さらに人が話すのを聞くことや質問に答えることで、新たな発見や気づきが深まっていくのです。


火入れ式の様子。
やり方は子どもたちが考えました。

火入れの後は
成功を祈ってお神酒を飲みます。
もちろん子どもはカルピス。

焚き口の熱さはそうとうなもの。
手甲、軍手、皮手、前掛けは必需品です。

また今回の窯焚きにはもうひとつ大きな目的がありました。48時間は焚き続けるということです。
穴窯を改造したばかりで、どのような焼き上がりになるのか誰もわかりません。
だから、とりあえず時間を決めて結果を見てみる。
さらになるべくたくさんの人が関わって、それぞれ発見を重ねることで次の窯焚きへつなげようとしました。
しかし運が良いのか悪いのか、改造が上手くいったおかげで
たった12時間で1000℃の壁を越えてしまいました。
このまま順当に焚き続ければ、あっという間に目標の1250℃に行ってしまいます。
しかもこの短時間では焼きムラがあるかもしれません。ここからが勝負となりました。
気を抜くと温度があがってしまう窯に対し
子どもたちはボソボソの薪をいれたり、太い薪でゆっくり焚いたり、インターバルを長くしました。
しかしほっておきすぎると今度は中の熾きがなくなってしまいます。
神経を集中して、やり方を考えながら子どもたちはなんとか1000℃を越えたところを維持していました。


窯の中はマグマのように
燃えたぎっています。
裸眼では中は見れません。

中を見る時はサングラスをかけます。
熱いですがよく観察することが必要です。

窯ののぞき穴から中を見ます。
炎の流れ、釉薬の溶け具合が良く見えます。

11/26 午前5:00 火入れから45時間
最後に60本の薪を入れる大くべをして窯を閉じ、無事に穴窯を終えることができました。
子どもたちの表情には疲れもありながらも安堵が浮かんでいました。
これから1週間窯を冷やしてから、作品が出されることになります。

今回の窯焚きではすべてにおいて子どもたちが責任を持つ事で、それぞれが考えざるを得ない状況にしました。
知識や一過性の体験では得られない大きな学びを得るためには
現代社会には欠けている大人と子どもの信頼関係が必要なことだと強く感じました。


記録を取るのも大事な仕事。
窯の変化や薪を何本いれたのか
その時の温度を記入します。

窯焚きのお楽しみは
窯の火を使った料理!
こちらは焼き芋。
お餅やホットケーキも登場しました。
子どもらしい一面です。

最後の大くべを終えて
煙突から大きな炎が出ています。
3日間にわたる窯焚きもこれで終了。
子どもたちは本当によくがんばりました。お疲れ様!



支援団体活動レポート