平成18年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
30 NPO法人 グリーンウッド自然体験教育センター 長野県 「僕たちにもできた!!2006登り窯プロジェクト」地域に根ざした暮らしから学ぶ自然体験―土・木・炎からものづくり
「登り窯」で手作りの食器を作る。登り窯の仕組みを通じて自然について科学的な理解を深めるとともに、燃料の赤松を用意するなどの自然体験活動のプログラムが組み込まれる。

「僕たちにもできた!!2006登り窯プロジェクト」
土が食器になる!不思議を学ぶ~陶芸編 [2006/7]

 日  時:平成18年7月 毎週水・木 18:00~20:00
 場  所:長野県泰阜村 NPOグリーンウッド施設内 伊那谷あんじゃね自然学校
 参加者:小学5年生~中学3年生15名、スタッフ5名、地元陶芸家2名

食器の材料となる粘土採りから始まり、擬似陶芸窯として七輪を用い、土が食器になる一連の流れを学びました。
「陶芸になる土はネバネバする!」「手でこねると形になる!」

今回のプロジェクトの核となるのは『登り窯』と呼ばれる薪で焚く窯です。
しかし、薪の窯は、作品ができて「それじゃ、やってみよう!」と言ってできるような簡単なものではありません。
というわけで子どもたちは薪窯を実施する前に、ウォーミングアップとしてガス窯にチャレンジします。
なぜガス窯がウォーミングアップになるのか?それは例えば、パンを焼くのと同じ考え方です。
パンを焼くにしても、今までやったことのない人が本格的な薪の石窯で焼くのは難しいもの。
火の調節や温度の管理が不安定だからです。しかしガスのオーブンであれば、比較的誰でも簡単に出来るでしょう。
まずは薪窯より手軽なガス窯で登り窯の仕事量を想像できるようにすること
土が石(陶器)になる化学変化を体験して、窯の中で陶器がどのような変化をしているのか
想像できるようにするのです。


釉薬をつけています。これは鉄釉。
焼きあがると黒くなります。

適当にやってしまうと、窯焚きの
最中に崩れてしまうこともあるので、
慎重に積み上げていきます。
子どもたちも緊張の面持ち。

いよいよ窯焚き。先生から扱い方や
注意点を教えてもらいます。

まずは窯詰め。
狭い窯の中に何百という作品が入るので、ただ置いていっては入りきりません。
棚板の大きさを考えながら、同じような高さのものを選んだり空きスペースにあう作品を選んだりと
なかなか難しいのです。
この窯詰めですが、本来であれば大人がやったほうが楽です。時間もかかりませんし、作品も安全です。
しかしこのプロジェクトではあえて子どもたちが行います。
ひとつはかけがえのないものを大切に扱うということを学んでもらうためなのです。
子どもたちは交代で詰めて行きます。だから自分の作品だけを詰めるのではなく、他の子どもの作品も触ります。
現代社会では、大事なものを大事に扱うということができない子どもが多くなってきています。
例えばプラスチックやペットボトルなど、壊れにくい素材が増えていることにも原因があるように思えます。
人の思いの詰まったものを割れないように、壊さないように扱うことで
子どもたちは陶芸だけを学ぶのではなく、やさしさや思いやりも学んでいくのです。


先生の書いた温度の理想曲線
(グラフ)を見ながら、
チームで作戦を練ります。

焚いて1週間冷やして
出来上がりました!
土が見事に陶器へと変化し、
さらに釉薬は鮮やかな色を表しました。

窯出しも子どもたちが協力して
行います。自分の作品だけでなく、他の人の作品もあるので丁寧に運びます。

窯詰めが終わるといよいよ窯焚きです。
ガスのバルブを調整しながら温度を管理し、1250℃まであげるのが仕事です。
その時、注意しなければいけないのは、作品を爆発させないことです。
珪酸分膨張といって、粘土に含まれている珪酸は570℃になると膨張し始めます。
そのときに急激に温度を上げると爆発してしまうので、緊張が抜けない時間となります。
子どもたちは2時間交代のローテーションを組み、その時間は責任を持って窯焚きをします。
いつ作品が爆発するかわからないし、見えない窯の中で自分たちの管理している炎が
どのような変化させているのか想像するためには、五感を研ぎ澄まさなければなりません。
窯を触ったり、音を聞いたり、たまにのぞき穴から様子を見ます。
ローテーションで焚くのには理由があります。それは「全員で焚く」という意識を高めるためです。
登り窯では、5日間を24時間ずっと窯焚きをします。ひとりでは決して出来ない作業ですが
仲間と協力してやり遂げるという意識がないと、たとえやり方はわかっても失敗してしまいます。
次のローテーションの子どもに引継ぎ、その子どもは自分たちの責任を果たしながら
また次の子どもへと引き継いでいきます。より高度な登り窯をやるためにも、このガス窯で
しっかりと自分の責任と他人と「託しあう、支えあう」ということを感じ取っていかなければならないのです。
次回は窯の構造を知るために「穴窯」と呼ばれる薪窯の解体、修理を行います。
子どもたちが学ぶことはさらに高度になっていきます。


全て窯出しされました!個性が溢れ、人と自然の温もりがたくさん詰まった作品たちです。

自分が作ったものの焼き上がりは
誰でも気になります。
細部をチェックします。
思ったとおりに出来上がったかな?

最後に作品の講評です。
窯の温度、炎のまわり方がどうだったのか、先生から説明がありました。
これを次の窯焚きに活かしていきます。



支援団体活動レポート