平成18年度トム・ソーヤースクール企画コンテスト支援50団体の企画より、
その活動や実施のレポートを順次掲載していきます。


  活動レポート    

NO学校・団体名都道府県企画の概要
17 NPO法人 地球野外塾 東京都 「少年少女多摩川環境調査隊」
多摩川の総行程80kmを人力で移動し、キャンプをしながら、川面でゴミや水の汚れなどを調査するほか、野鳥や魚などを観察し、自然を考える体系的な自然体験活動。

「少年少女多摩川環境調査隊」 [8/14-8/18]

 日  時:18年8月14日(月)~18日(金)
 場  所:奥多摩・白丸ダムから羽田
 参加者:11名(9歳から15歳までの男子8名、女子3名)

 参加者は多摩川流域の川崎市、世田谷区のほか、練馬区、横浜市からの参加でした。
 うち中学3年生の男子1名はカヤック経験があり、自艇で参加しました。
 スタッフは早稲田大学ほか大学のカヌークラブの現役諸氏をはじめ、
 多摩川上流で長くカヌー教室を開いて数々の名選手を指導するなど
 カヤックの指導経験が豊富な方々を配して安全管理に万全を期しました。

 8月14日(月)晴れ
 1日目~緑豊かな渓谷でカヤックの漕艇練習。
 (スタッフ:早大カヌー倶楽部3名、地球野外塾2名)
10:02参加者 JR青梅線白丸駅集合
10:20白丸ダムへ移動
10:30白丸ダムサイトにてパドルの使い方を陸上で練習
11:00漕艇練習・フォワードとリバースの練習
12:30昼食
13:15漕艇練習・転覆時の脱出、障害物回避の練習
15:50白丸駅から川井へ電車で移動
16:15川井キャンプ場着、テント設営
18:30食事
19:30たき火を囲んでミーティング
20:30就寝

初日は、まったくはじめてパドルを握る子どもたちを対象に漕艇練習。
大人と違って子どもたちはあっという間にカヤックに慣れます。
今回、短い間で教えたことはもっとも基本的なフォワード(前漕ぎ)と、方向転換に必要なリバース(逆漕ぎ)で
このふたつが使えれば艇が漕げるようになります。
午後に行った障害物の回避練習でもすぐにこの技術を使いました。
早大カヌー倶楽部の主将であり、今回のリーダーだった内田君は「新入部員よりもうまい」と驚いていました。
夕方、川井キャンプ場についた参加者は、一日の疲れも見せずにテント設営、調理のお手伝い。
食後はたき火を囲んで自己紹介とこのキャンプに対しての想いを話してもらいました。
絶対に最後まで漕ぎ下りたいという熱い想いで、いよいよ明日からは自分たちの力で多摩川を下ります。
思わず飛び込みたくなるような上流から、ゴミが水辺に浮かぶ下流へと。

 8月15日(火)曇り・夕方より小雨
 2日目~多摩川上流の清流でスリルと涼感あふれるラフト。26km移動。
 (スタッフ:ラフトリーダー2名、早大カヌー倶楽部3名、地球野外塾2名)
05:30起床・食事準備
06:30朝食
08:15御嶽へ出発・徒歩
09:00みたけカヌー教室で安全用具装着(4km)
09:30御嶽橋下で環境調査①(全7カ所)
10:10御嶽橋からエントリー場所へ移動
10:40ラフトの安全講習
11:20漕艇開始
12:15昼食(~13:00)
17:00羽村の堰着、環境調査②(18km)
18:00徒歩で中央公園へ出発(4km)
19:00福生市多摩中央公園着・設営
20:30夕食
20:50ミーティング
21:00就寝

管理漁業区域を避けて川井から御嶽までは徒歩で移動。
御嶽橋の下で第1回目の環境調査。方法はすべての環境調査箇所について次の通りです。
水質検査は市販の試薬を使って1.CDD、2.亜硝酸濃度、3.残留塩素、4.PHの4つを調べます。
水棲生物は網を使って全員で30分間採取。
石をひっくり返してさらってみたり、川岸に生えている草の下に網をつっこんでみます。
採れた生物は環境指標生物とそうでない生物に分類して個体数を数え、リリースします。
ほかに調査地点の水温、川幅(目視)、川底の状態、流速などを記録しました。
御嶽橋下では清流に住む環境指標生物がおもしろいようにとれました。水質検査でも汚染物質は最低基準以下。
環境調査後はラフト開始地点から力強く漕艇開始。
ラフトとは空気を入れた7人艇で、激しい波や岩に強い構造になっており
岩の間を白いしぶきをあげて流れる川を、舵取りのリーダーの指導でたくみに障害物を避けながら下りました。
小作の堤をひかえると川相はおだやかになり、羽村で東京都の水源として取水されるため
本流の水量が激減するのでラフト終了。
疲れた体でもうひとがんばり環境調査。
漁協の役員から「金を払っている釣り人のじゃまをするな!」とどやされたのも
多摩川の「環境」を考えるのにいい体験でした。
幕営地に着く頃はすっかり日が暮れてまた雨が降り出しました。ほんとうにお疲れさま。

 8月16日(水)雨のち曇り
 3日目~中流域。多くの堰堤を越える長くきつい1日。
 (スタッフ:2人艇指導者1名、早大カヌー倶楽部3名、地球野外塾2名)
05:00起床・食事準備
05:30朝食
06:30拝島へ徒歩で出発(4km)
07:30拝島橋着、艇の組み立てと川までの搬送
08:00拝島橋で環境調査③
09:00拝島橋出発
11:00日野橋にて昼食(6.5km ~12:00)
16:00是政(7.5km)
16:30テント設営
17:00シャワー
19:00夕食
20:00ミーティング
20:30就寝

この日は行程中でいちばんきびしい一日だったかもしれません。
この日から最後の日まで子どもたちは同じ参加者どうしで2人用艇を漕ぎます。
艇の操作はラフト以上に自分たちの力量に関わるうえ、漕がなければ少しも前に進まないのです。
また、多摩川中流域は治水のためにいくつもの堰堤があります。
この堰堤は艇をかついで越えていかなくてはならないので、体力がいります。
一昨日にはじめてパドルをもった子どもたちが、果たして今日の行程をこなすことができるかどうか
私たちは心配していましたが、心配をよそにすばらしいパフォーマンスを発揮しました。
朝はそぼふる雨のなか、川の中に露岩地帯が続く福生・拝島間は徒歩で移動。
拝島ではじめて見る2人艇は軽量で見た目もスマート。子どもたちも気に入ったようです。
環境調査を終え、バディを組ませて乗り込ませるとすぐに艇に慣れ
あっという間に陸上サポート班の視界から消えていきました。
日野橋の下で、参加者のお母さんからおにぎりの差し入れ。
市販のお弁当ではなく、手作りのあたたかみがある食事をさせてあげられるのはありがたい限り。
昼食後は艇のうえで眠さと格闘している子どもも見られました。
でもパワー充填して予定より早く今日の宿泊予定地に到着できました。

 8月17日(木)曇り・夜間に雷雨
 4日目~いよいよ都区内へ。ふだん見慣れた風景を水上から見る貴重な機会。15km移動。
 (スタッフ:2人艇指導者1名、早大カヌー倶楽部3名、地球野外塾2名)
06:00起床・食事準備
06:30朝食
08:10出発
08:40是政橋、環境調査④
09:20是政橋出発
11:30上河原堰堤(7km)
12:00上河原堰堤出発
12:45和泉多摩川にて昼食(~13:30)
14:30二子久地遊地到着(8km)
15:00テント設営
16:00入浴
19:00夕食
19:50ミーティング
20:30就寝

じりじりと暑くなりそうな日。
川幅がしだいに広くなり、木陰もない水面は意外に暑いのにもかかわらず子どもたちは元気に艇を漕いでいきます。
和泉多摩川では、幾たびにもわたる大水を奇跡的に生き延びた柳の大木の下で、緑陰の風を感じながら昼食。
この日も参加者のお母さんがたの差し入れでした。こうした手作り感があるのが今年のキャンプの特徴でした。
和泉多摩川からはわずか1時間で今日の宿泊場所、川崎市高津区の河岸に到着。
人気の街、二子玉川の至近で幕営する機会は稀少。ひっきりなしに人車が往来する二子橋とはうってかわって、
日暮れれば人影もまばらな静かな河岸での夕食をとりました。
天気予報で明日の好天もわかり、今宵が仲間たちとの最後の夜になるので各人からの感想をききました。
強い達成意欲をもって明日に臨みたいという、子どもたちの静かな闘志が感じられました。

 8月18日(金)晴れ
 5日目~ぐっと川幅が広くなる下流域。海風に逆らって最後の力をパドルにこめる。17km移動。
 (スタッフ:2人艇指導者1名、早大カヌー倶楽部3名、地球野外塾2名)
05:00起床・食事準備
05:30朝食
07:00出発
07:30二子橋、環境調査⑤
08:15二子橋出発
10:00多摩川大橋、環境調査⑥
10:45多摩川大橋出発
13:00大師橋にて環境調査⑦、昼食(17km)
14:15大師橋東の桟橋にボートをこぎ着けて漕艇終了
14:45漁船にて多摩川0m地点へ出発
15:30桟橋帰着、環境調査のまとめをするミーティング
16:45穴守稲荷駅へ出発
17:10京急・穴守稲荷駅にて解散

長かったようなキャンプも過ぎてしまえばあっという間の出来事。
昨日は神奈川県で局地的豪雨によって釣り人が行方不明になっており、私たちも未明に強い雷雨に見舞われて
増水を懸念しましたが、結局は初日から行動の支障になるような悪天には遭うことなく清々しい最終日を迎えました。
気合いもじゅうぶん、正面から上る朝日を受けて艇を漕ぎ出します。
今日は3カ所での環境調査があり、まず二子橋の下に向かいました。
時間経過とともに強くなる海からの風に注意を要します。
二子橋ではまだそれほど水質の悪化を感じませんでした。
しかし、そのあとの多摩川大橋下での調査では、生物もほとんど採取できず、よどんでにおいが漂う水が泥濘の岸を洗っていました。
多摩川大橋からはさらに川幅が大きく広がり、茫洋とした川に漠然とした不安を覚えながらも、子どもたちは相変わらずよいペースで下流へと漕ぎ続け、予定よりも1時間早く大師橋に到着。
ここで最後の環境調査です。
海からの水があがってくるためでしょう、ひとめ見ただけでも水質は多摩川大橋の下よりもよく
生物採取では子どもたちの網にたくさんの美しいヤマトシジミがかかりました。
環境調査を終えて大師橋やや下流の桟橋に艇をあげ、ここで漕艇はすべて終了。ほんとうによくがんばりました。
ここからはボート販売・修理業を営む巴さんのご厚意で、巴さん自らが運転する漁船に乗って
多摩川河口の多摩川0m地点を確認してきました。
最後に環境調査のまとめをするミーティングを行ってデータを再確認。
行程中の環境調査の記録は、疲れもあって記入漏れや記入ミスなどがあるものです。

参加者の何人かはこれらのデータをまとめて夏休みの宿題にしているはずです。
多摩川80kmを自力で下り、環境の変化を体感するキャンプは全員ケガもなく、ぶじ終了しました。





支援団体活動レポート